僕のわがままには訳があり |
1993.12月31日。生後70日目。約40日間預かっていたチビ太とお別れの日。 そして年が明けて1月3日、再会というか、もう少しあずかってほしいとのことでOKしたが、このつらさを書きつづる言葉がなかなか見つからない。 あまりのショックに3日前よりも小さくなったチビ太を抱いたままただ立ちすくむ。 この子がチビ太なの、悪夢としか思えない。 心の中で、どうしたの、何があったの、何をされたの、どこにおかれてたの、何でこんな姿になってしまったの、おーなんてかわいそうなこと...こんなことがグルグルと頭の中を回っている。でも彼を前に、それは言えない。 ただうそでも、ひと通りの言い訳を聞くしかなかった。 もうそんなことはどうだっていい。とにかくこの心に傷を負ったこのチビ太を、どうやって癒していけるかそれが先決だ。 始めて見る死んだような目、うす汚れた身体、ブルブルと身体がふるえおびえた態度。 たかが3日間で、こんな姿に変わってしまうなんて、一体何があったの。 母親代わりのチェルも、あまりの変貌した姿に心配そうに見ている。 半日位、何も手につかず呆然とした時間が過ぎた。 ただただ、止まらない涙と共に、グレーに染まったチビ太をなでて、触って、抱きしめることしか出来ない。 気が付くとチビ太の身体は、ぬれてビショビショ。とにかくお風呂に入ってきれいになろう。 ドライヤーも終わり、毛は元通り真白に戻ったけれど、チビ太の目は、まだ死んでいる。なんてことだ。 なにをしたんだ。この子に。 だが、もうひとつだけ戻ったことがある。それはチェルとの関係だ。チェルには心を開いているのがハッキリと分かった。 良かった、本当に良かった。 ということは、人間不信になるようなことを何かされた、ということになる。 私自身にさえも、遠慮がちに遠巻きで見てる。 もしかしたら、ふと不安な思いが首をもたげた。 彼の事情で預かっていたチビ太。大切な成長期いろんな面で、チェルと同じ扱いをしていた。 当然チビ太はチェルの弟だと思っていたに違いない。 それをある日突然、別の家に連れて行かれ、淋しくて泣いていたら薄汚れた人気のない暗闇の物置小屋に入れられてしまった。 ますます気が狂ったように泣き続け、食事もとらずに3日間、泣き続けたのだろう。 犬を飼ったことのない彼は、家族の人が泣いてうるさいというので物置に入れたと後日謝罪したが、時すでに遅し。 この3日間が、あったことで今のPu太君の性格を形成する上で大きな要素になった。 この日を機に、Chellは忍耐と我慢強さとを学んでいくことになる。 そしてチビ太は、いつも自分が一番で愛情を一心に受けているという自覚を持ち、ちょっとすねれば事が通るということを学んでいく。 数ヶ月が経過した。だいぶ明るくなったがまだまだ100%信頼関係にはなりきれてない。また私に問題があったようだ。 今ここにいる間だけでも、ありったけの愛でつつんであげたい。でも今度帰ったら決死の覚悟で育ててもらわないと、二度と繰り返してはならない。あんな思いは... でもやはり同じ目に遭うかもしれない。このままもう二度と離したくない。 そんな思いが日に日に募っていく。 やっとここまで戻ってきたのだから、彼と真剣に話し合おう。 「どうしたら、チビ太が一番幸せになるかを考えてください」 「・・・・」 「この子の一生を左右する大切なことです」 「・・・・」 「どうか、思っていることをおっしゃってください、黙っていては分かりません」 「・・・家に連れて帰ったら、またこの間と同じになるかもしれない..この子のためにはここにいることが幸せかもしれない」 「はい、分かりました、では今日から、この子はうちの子にします。それでいいですか。」 「・・・本当にいいんですか。何から何までおまかせしといて..」 「もちろんです、あなたがそう言ってくれる事を、私もチビ太も待っていましたから」 「ありがとう...」 第二次転換期、心に引っかかっていたものが失くなった。 さあ、これから先、何があってもこの2頭のピレニーズ、立派に育てるぞ。PuPuと命名する。 こう決めた瞬間から、チビ太の瞳が輝きを取り戻した。 すべては人間側に問題があったのだ。 犬はとても純粋で、人の心を読み取る超能力を持つ神秘的な生き物であることを学んだ。 P・S 9才になるPuPuは未だに留守番は出来ません。Chellがいればなんとか出来るけど、それでも帰宅すると、ム ーッとしてご機嫌が、ナナメです。 私のベットで一緒に寝ています。 これだけは誰にも譲れません。 |
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